シリーズ第12話
私うえだこうじが『あした、どこかで。』に採用された写真について振り返る新企画
“写真で振り返る『あした、どこかで。』”
12話目は、2017年10月に発売となった『あした、どこかで。3』の表紙に採用されたこの写真について語っていきたい。
作り方が真逆になったパート3
『あした、どこかで。』のシリーズは今まで私が過去に撮りためていた写真をチョイスし、そこに作家さえぐさはなえの言葉を添えるというスタイルだった。
しかし、パート3からはその逆で、原作を先行させその内容に沿った写真を選ぶこととなった。当然既存の写真ではうまく融合しないものも多く、その内容に沿った写真を撮らねばならないということとなった。これはなぜかと言うと、この本は「写真集」なんて言ってはいるが本当は「物語」で、みなさんがコメントとかキャプションと言っていた短文は、実はうっすらふわふわと繋がっていて、なんとなく一つのストーリーとなっている。
これは作家でもあり編集者でもあるさえぐさはなえが故意に仕掛けたもので、読む人の“その時々の心を映す鏡”となっている。そして、どこからでも何度でも読み返せるようにと…
しかし第3作目ともなると、写真に縛られる今までのやり方では限界がある。そこで原作先行型に変更し制作を進めた。とはいえ…撮る側には懸念もある。
そこで「スズメとはいえ野生の鳥。なんでも思うように撮れるわけではないから、写真の要望に関してはお手柔らかに」と前置きしてプロジェクトはスタートした。
ちなみに、さえぐさはなえが解説するパート3の作品裏話はこちら↓です。「その3」まであると思います。まさに「ウラ設定」の話が書いてあります。
写真は「見つける」がテーマのこの物語にピッタリだった
パート3の初回の話と思い、本題から少々それた話をしてしまった。ここからは撮影話をしていきたい。
私は基本、単独でいる子にアプローチすることが多い。だがこの日は珍しく十数羽の群れを撮影していた。群れの撮影はなかなか難しい。都市部の公園に住うスズメは人懐っこいが、群れている時は野性味が強くなるのかとても敏感だ。
でもスズメが警戒しないよう「草木のようになって」待ち構えることができれば、群れは人を意識せず安心していつまでも(といっても大抵5〜6分くらいか)地面をほじくっている。この日ではないが、そんな群れが地面をほじくりながら移動してきて、あげく私の膝下を通り過ぎて行ったこともある。
さて
撮影していると背後に気配がする。背後には生垣があって、そこもよくスズメがいる場所だった。群れの撮影は十分にしたので、今度は単独のスズメを撮ろうと思い、ゆっくり半円を描くようにして振り返った。
まず何をしているのか、ちょっと観察をする。
要は群れに加わりたいようだ。それを私が邪魔するたカタチになっていた。
私の体制が変わると、次々に群れの方向に飛んでいく。
群れは枯れた草が積もる中にいたので、きっと何か食べるものを見つけていたのだろう。そして私の後ろにいたスズメたちはそれを知り、そっちへ行こうと思ったが、私がいたのでちょっと困っていたのかもしれない。
私が観察しているうちに生垣に残るスズメは3羽となっていた。急ぎ状況に合わせ、飛んでいくスズメを撮影するモードに。
飛ぶスズメを撮るのは難しいが、飛び出しなら撮りやすい。しかしそれでも速いので、ファインダーの中で余りを広くとって撮影するのがセオリーだと思うのだが、画面に小さく写るスズメを撮ってもつまらないので、この時はやや寄り気味にして撮影してみた。
これはちょっとした冒険で、攻め過ぎるとスズメがまったく写っていないなんて結果になる。なので経験から攻め過ぎず引き過ぎずといったところで撮ってみた。
写真は撮れてしまうと何てことないと思われがちだが、こんな風に経験の中で考え、その都度チャレンジするところが面白いと思う。
そうして撮れたのがこの写真。飛び出しという状態より“ちょい前”の段階で、美しい翼を大きく広げ、体は今まさに飛び立とうとする前傾姿勢。ピントもバッチリだ!
会心の写真が撮れた。
表紙選考に際しいくつかの候補があったが、群れを“見つけ”今まさに飛んで行こうという様を美しくとらえたこの写真が「見つける」がテーマのパート3の表紙にピッタリだ、ということになった。
下のリンクをクリックしていただけると励みになります。

人気ブログランキング

最後までお読み頂きありがとうございましたm(_ _)m