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シリーズ第10話
私うえだこうじが『あした、どこかで。』に採用された写真について振り返る新企画
“写真で振り返る『あした、どこかで。』”
10話目は、2016年9月発売となった『あした、どこかで。2』に掲載されたこの写真を撮影した日のエピソードやその思い入れなどを記録と記憶を辿って語っていきたい。
小さな鳴き声と雨音だけの世界
少し強い雨の日だった。
雲も分厚くて撮影条件は悪い。
私は撮影に出るか出ないかで悩んだが、スズメに会いたい気持ちに勝てず、お昼近くになって撮影に出る決心をした。
晴れの日ならばいるはずの散策する人たちや運動する人たちがいない。
フィールドは静かだった。
私はまず、一番近くにあったベンチに座り様子をみる。
雨のせいか姿を見せない。
でも声がする。
まるで「こっちにこいよ!」とでも言っているかのようだった。
しばらくして、私は次のベンチがある方へ歩いていった。
その近くには普段スズメたちがいる生垣があって、そこからスズメがベンチへと行ったり来たりする姿をよく見ているから、待っていたら出てくる子もいるのではないかと思った。
そんなわけで、まずベンチに座る。
どのくらいたっただろうか。一羽が生垣の方向からこちらへ飛んできて、草むらをほじくるようにして何かを探している。「何か」はきっとご飯だろうが、よく見えなかった。
私はベンチからスルスルとおしりを滑らせ、地面に蹲み込んでで様子を見ていた。
ふと気がつくと、背後のベンチに数羽のスズメがやってきた。
私はゆっくり体を捻らせた。
スズメの小さな鳴き声と雨音だけの世界。
撮影していると、一羽、二羽と飛び立っていく。
最後に一羽が残り、その子は見張りなのか雨降る中しばらくその場に佇んでいた。

満足に撮らせてもらったしこれ以上は邪魔かなと思い、座った体勢のまま少しずつ離れ撮影を終えた。
この写真を『あした、どこかで。2』で採用すると決めたさえぐさはなえさんは「(当たり前だけど)写真は音が出ない。でも音が聞こえるようなシーンを作りたかった」と言った。まさにピッタリの一枚だと思う。
さて続きのお話。
ベンチ側に向かっていた体を反転させると、そこにはまだ数羽のスズメがいた。
そこにびっくりするハプニングが発生!
スズメたちは徐々に私の方に近づいてきて、ついに一羽の子スズメが私の靴に乗ってきたのだ。
それだけではない。驚きと感激で動けない私の足を膝まで登り、そこでしばらくジッとしているのだ。そしてゆっくりと手を差し伸べたら、掌を「チュッ」と優しく突っついた。
こんなことは、はじめてだった。
残念なことに撮影はできなかった。近すぎてレンズのピント範囲外だったからだ。
信じるか信じないかはあなた次第・・・みたいな話だが、これは本当の話。
さらに、膝に乗った子スズメはその後私の膝から降りて、先ほどのベンチの方へ行き雨宿りをしながら寝てしまった。

こんな所で寝てしまうなんて危険だと思い見守ろうと思ったが、かなり近いところにいる私の存在が返って眠りの妨げになるかもしれないと思い直し、長めに、そしてゆっくり後退りをしてその場を去った。
雨に濡れた彼岸花が綺麗だった。
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