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シリーズ第6話
私うえだこうじが『あした、どこかで。』に採用された写真について語る新企画
“写真で振り返る『あした、どこかで。』”
6話目は、2016年9月30日に発売された『あした、どこかで。2』の表紙に採用された子を撮影した日のエピソードや表紙についての思い入れなどを記録と記憶を辿って語っていきたい。
試行錯誤の成果を
表紙として使って欲しかった
2015年の9月に1stが発売され、その一年後にはそのパート2を販売するという…
私は当初、『あした、どこかで。2』の制作〜販売は、まだ早すぎるのではないか?と反対した。1stは売れ続け、まだこれからという思いがあったし、パート2と言っても何をするのか私には掴めていなかった。しかし、会社が好んで私のスズメ写真を本にしてくれるというのだから気持ちは嬉しかったし、内容は私が頭を悩ますことなく、作家さんサイドから素早く「骨格」が提示されたので、それではやるか!ということになった。
表紙の子で思い出すのは、とにかくピントが合わなくなるほど近づいてくる子だったということ。
私が使ったニコンのレンズ、AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VRの最短撮影距離は1.75m。だがマニュアル操作なら1.5mまで近づいてもピントは合う。このレンズ&ボディは目一杯ズームした状態で距離基準マークからレンズフードまで約40cmほど(Nikon D7100は約39cmだった)なので、フードの先端からなら約1.1mの距離まで近づいて撮影することができる。しかしそれ以内に入り込まれるともう眺めているしかない。
近づいてきたあの子は、
羽毛をブワっと膨らませブルッと体を震わせた。
スズメ写真としては「やや遅めのシャッタースピード」で捉えたので、速い動きが流れて写り、ちょっと面白い写真になっている。本当は少しワイドに撮ったほうが正解だが、表紙に使うためのクリアランスなどの「事情」をクリアした上で、インパクトのある一枚という意味ではうまくいったと思う。
それにしても、わざわざ近づいてきてこんなことするのは何故?とは思うが、実はこの子の後方はスズメたちの「砂浴び会場」となっていた。
砂浴びをして満足したぞ!
アンタもどう?って感じなのかもしれない。
現在進行形ではあるが、当時は特にスズメに近付くための方法を模索していた。そしてアップで撮ることも。
それでどうするのか?
私はスズメと心で会話をする。
本当に話せる訳ではない。
が、何か言葉が跳ね返ってくるのでそれを感じるようにしている。
例えば、お地蔵様やご先祖様にお参りすると何か語りかけてくるようだという人がいる。
私はスズメからそういった「何か」を感じたりしている。私の中の「無意識な自分」が、愛してやまないスズメを媒体にして語り掛けてくる感じ。
少々オカルトじみてはいるが、私にとってはそれがたまたまスズメだったというだけで、同じような思いや体験をした方は多いのではないだろうか。
話の内容は他愛のないものが多いのだが(笑)
せっかくのパート2の表紙なので、写真だけでなくスズメとの交流の中で得た様々な成果をカタチにしたいと思った。その中で今回はあの子が良いと心に決めていた。
会社の方としてはもう少し「スズメ感」のある可愛らしい写真を望んていたようで、私が推したこの写真は市場にはまだ早いのではないかと言われた。
ただ、深くスズメと親しむ人たちからの評価はいただいたし、努力の成果でもある一枚が表紙となったので私の満足度は高い。
当時の私は王道をゆく野鳥写真とは違う方法でもスズメの写真を撮れないか?と考えていた。
1番はスタンス。できるだけ通行人のように振舞うこと。その中で待ち構えたり、ゆっくり追いかけたり…。分かりづらいかもしれないが、私はロケ地を回遊魚のように回り続けて撮る。
2番目は機材。機材はできるだけ小型が望ましい。そして特別なものではなく一般的な機材がいい。本当は最高の機材で撮りたいところだが、経済的に無茶な話というだけではなく、人が多い場所では「さりげなさ」が重要なので、できるだけ目立たない機材がいい。
その方法は一定の成果を上げたが、その中でハイクオリティを維持し続けるのは大変だった。
機材に関してはスズメに対する配慮という点でも小型化が望ましいと思っていたが、試すうちに慣れたスズメに対してはあまり効果がないことも知った。機材云々以前に彼らの「ゾーン」に入れてさえもらえれば、どんなカタチでも撮れると今では思っている。
まぁ、そのゾーンに入ることが難しいのだが。
たかがスズメ、されどスズメ。
簡単なようで難しい。
でもそれでいい。それ、だからいいのだ。
撮影同日の別カット
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